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ドローンで鳥獣被害を防ぐ|最新技術・事例・導入ガイド【自治体・農家必見】

防災・災害
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ドローンで鳥獣被害を防ぐ|最新技術・事例・導入ガイド【自治体・農家必見】

目次

鳥獣被害の現状と課題

日本各地で鳥獣による農作物被害が深刻化しています。
特にイノシシ・シカ・サルなどによる食害や、カラス・ハトといった鳥類による収穫物の荒らしは、農業従事者にとって経済的損失だけでなく、労働意欲の低下にもつながる深刻な問題です。
また、農業だけでなく、交通事故・インフラ被害・森林被害といった二次的影響も増えており、従来の対策手法では限界が見え始めています。

こうした中、近年注目を集めているのが「ドローンを活用した鳥獣被害対策」です。
空から広範囲を監視・追跡できるドローンは、これまで人手や固定装置ではカバーしきれなかったエリアを柔軟に対応できるため、全国の自治体・農家で導入が進みつつあります。


全国で拡大する鳥獣被害の実態

農林水産省の発表によると、全国の鳥獣被害額は年間で約150億円前後にのぼり、その約7割がイノシシ・シカ・サルの三種によるものとされています。
被害面積は年々拡大しており、耕作放棄地の増加や高齢化による見回り人員の減少も相まって、被害防止体制の維持が困難になっています。

さらに近年では、都市部周辺でもカラスやハトによるゴミ被害や糞害、漁港周辺でのウミネコ・カモメによる被害など、多様化が進行。
季節や環境によって発生エリアが変動するため、従来の固定的な防除策では対応が追いつかないのが現状です。


従来の対策方法とその限界

従来の鳥獣対策は、電気柵・ネット設置・爆音機・忌避剤・わな・パトロールといった手法が中心でした。
これらは一定の効果を持つものの、設置や維持に手間がかかり、広範囲をカバーできないという課題があります。
また、動物が「音や光に慣れる」ことで効果が薄れる「慣れ問題」も多く報告されています。

特に中山間地域や森林に隣接する農地では、人が入りにくいエリアでの監視が難しく、結果として対策の「抜け」が生じてしまうことも少なくありません。
こうした課題が、より機動的・広域的に対応できるドローン技術の需要を高める要因となっています。


なぜ今、ドローン活用が注目されているのか

ドローンは「空からの監視・追跡・威嚇」を可能にする新しいツールです。
地上からでは把握しにくい被害範囲や個体の行動を、上空からリアルタイムで把握できるため、被害の早期発見と即応が実現します。

また、近年はAI技術との連携が進み、赤外線カメラによる夜間検知や自動飛行ルートの設定、威嚇音・光による自動追い払い機能なども搭載されるようになりました。
これにより、少人数でも広域エリアの鳥獣管理が可能となり、労力とコストの大幅削減を実現しています。
さらに、自治体・農協・防除組合などの現場でも導入事例が増え、実際の効果が検証され始めています。

ドローンを使った鳥獣対策とは

鳥獣被害の深刻化により、農家・自治体・研究機関などが次々と導入を進めているのが「ドローンによる鳥獣対策」です。
従来の地上中心の対策では、広大な農地や山林の監視に限界がありました。しかし、ドローンは上空から広範囲を短時間でカバーでき、侵入や被害発生を“その場で把握・対応”できる点が大きな特徴です。
さらに、AI画像解析・赤外線センサー・自動巡回機能などの最新技術と組み合わせることで、従来の“人の経験に頼る防除”から、“データに基づく鳥獣管理”へと進化しています。


ドローンが果たす役割(監視・追い払い・調査)

ドローンの活用範囲は年々拡大しており、単なる「飛行カメラ」ではなく、鳥獣対策の中核ツールとして以下の3つの機能を担います。

1. 広域監視(モニタリング)

ドローンは高解像度カメラや赤外線センサーを用いて、広大な農地・森林を短時間で巡回できます。
従来、1日かけて人が見回っていた範囲を、ドローンであれば10〜20分程度で確認可能です。
上空からの俯瞰映像により、獣道や足跡、荒らされた作物エリアを明確に把握できるため、被害の「発生予測」も立てやすくなります。

2. 追い払い(威嚇・忌避)

ドローンにはスピーカーを搭載し、動物が嫌う音(捕食者の鳴き声、爆音、金属音など)を再生して忌避行動を促します。
例えばカラスにはワシの鳴き声、シカやイノシシには高周波の爆音を利用するなど、種ごとに最適な音源を設定できます。
夜間には強力なLEDやレーザー光を用いた視覚的威嚇も有効で、農地や果樹園周辺の侵入を防ぐのに役立ちます。
また、スケジュールやセンサー連動で自動発進させることで、人手を介さず定期的な威嚇を実現できます。

3. 調査・データ収集

ドローンが収集した映像・赤外線データをAIが解析し、出没頻度・時間帯・個体数などを自動記録します。
このデータを地図上で可視化(ヒートマップ化)することで、被害発生エリアの“ホットスポット”を特定でき、電気柵やわなの設置を最適化できます。
自治体や研究機関では、こうしたデータを共有して「地域全体での鳥獣管理体制」へと発展させています。


AI・赤外線・スピーカーなど搭載技術の進化

鳥獣対策用ドローンの進化は著しく、現在では「自動認識・自動巡回・遠隔監視」が可能なレベルに達しています。
以下は主要な技術とその活用例です。

  • 赤外線サーモカメラ(例:DJI Zenmuse H30T/Thermalシリーズ)
     体温差を検知して夜間でも動物を識別可能。夜明け前・夕方など活動が活発な時間帯の監視に最適です。
  • AI画像解析
     撮影映像をAIがリアルタイムで分析し、鳥・獣・人・車などを自動分類。
     「特定種の出没のみを警告」といった設定もでき、無駄な誤検知を防ぎます。
  • スピーカーシステム
     100dB以上の大音量で威嚇音を出すことが可能。
     Bluetooth連携で遠隔制御でき、複数の音源を切り替えながら運用することで動物の慣れを防ぎます。
  • 自動飛行プログラム(RTK・Waypoint機能)
     精密測位(RTK)を活用し、誤差わずか数cmで自動航行。
     同一ルートを繰り返し飛行しても誤差が少なく、データの比較検証が容易です。
  • クラウドデータ共有・遠隔管理
     飛行データや映像をクラウド上に自動保存し、役場・研究機関・警備会社が共同で分析可能。
     広域的な鳥獣対策ネットワークの構築にも貢献しています。

これらの技術を組み合わせることで、「監視 → 検知 → 威嚇 → 記録 → 分析」までを一貫して自動化できるのが、近年のドローン防除の強みです。
特にAI画像認識の精度は年々向上しており、最新モデルでは90%以上の識別精度を実現している例もあります。


農業・森林・水辺など用途別の活用シーン

農業分野

水稲・果樹・畑作などでは、カラス・ヒヨドリ・イノシシなどによる食害防止に利用。
例えば、収穫期前のトウモロコシ畑では、夜間自動巡回ドローンが侵入を検知すると音と光で即時威嚇を行い、被害面積を50%以上減少させた事例もあります。
さらに、作物の生育状況や地表温度を同時に測定する機能を備えた機種を用いれば、農業生産データの取得も同時に行えます。

森林・山間部

ドローンは人が入りづらい斜面や奥地でも安定飛行が可能で、動物の行動ルートや生息範囲の調査に最適です。
山林では、赤外線映像を解析し、イノシシやシカの個体分布を地図化。狩猟計画や電気柵の設置場所決定に役立てられています。
また、伐採地や林道沿いの監視にも活用され、環境保全・森林再生のモニタリングツールとしての役割も拡大しています。

水辺・漁業・都市部

河川や湖沼では、ヌートリア・アライグマなどの外来種の監視や、漁港でのカモメ・ウミネコ被害の防止に使用されています。
また、都市部では、駅前や公園でのハト・カラス対策として、静音型ドローンにスピーカーを搭載し、特定エリアのみを威嚇するピンポイント運用も可能です。
これにより、住民や観光客への騒音影響を抑えつつ、効果的な鳥害対策が行われています。


さらに、近年は「自治体 × 企業 × 研究機関」の共同プロジェクトも進んでおり、北海道・長野・島根などの地方自治体では、地域ぐるみの**“ドローンによる鳥獣監視ネットワーク”**が構築されています。
このような連携により、従来の点的な防除から、面的・広域的な「スマート鳥獣管理」への転換が進んでいます。


農家や個人が実践した具体的な運用方法

農家レベルでも導入が進んでおり、特に中規模農家や集落単位の共同運用が増えています。

青森県のリンゴ農家

果樹園でのカラス・ヒヨドリ被害を防ぐために、スピーカー付きドローンを導入。
早朝と夕方に15分ずつ自動飛行し、警戒音をランダムに再生する仕組みを採用しました。
3か月の運用で、被害果率が前年の8.2%から3.1%に減少。
また、スタッフ1名で運用できるため、人件費削減効果も確認されています。

事例2:兵庫県の水田地帯

イノシシ対策として、夜間用の赤外線カメラ付きドローンを活用。
農地の外周を自動巡回し、熱源を検知するとスマホに通知が届く仕組みを採用。
通知を受けた農家が現場でライト照射や威嚇音を発生させ、翌年度には侵入数が70%以上減少しました。
「電気柵の見回りに行く回数が減り、睡眠時間が確保できるようになった」という声も挙がっています。

岐阜県の有機農家グループ

有機農法で化学的忌避剤を使えないため、ドローンによる光威嚇を導入。
赤色・緑色LEDを交互に点滅させ、夜間飛行でシカの侵入を防止。
LEDパターンをランダム化することで慣れを抑え、3シーズンにわたって安定した効果を維持しています。


導入のメリットとデメリット

ドローンを用いた鳥獣対策は、従来の人力中心の手法と比べて「広範囲・高精度・省人化」を実現できる画期的な手段です。
一方で、導入には一定のコストや運用上の課題も伴います。
ここでは、実際に導入した自治体・農家・法人の事例を踏まえながら、3つの主要なメリット運用時に注意すべきデメリット・課題を整理します。


ドローン活用で得られる3つの主な効果

1. 広範囲を短時間でカバーできる

従来のパトロールやカメラ監視では、広域の農地や森林を見回るのに膨大な時間と人手が必要でした。
ドローンはGPS制御による自動飛行が可能なため、1回の飛行で数十ヘクタールの範囲を10〜20分程度で監視できます。
さらに、AI画像解析を組み合わせれば、ドローンが自動で鳥獣を識別し、熱源検知や移動経路の自動記録まで行うことが可能です。
その結果、人手不足に悩む農業現場でも、効率的かつ的確な防除活動を実現できます。

2. 被害の「早期発見・即時対応」が可能

上空からリアルタイムに映像を取得できるため、従来見逃していた獣道や侵入口の特定が容易になります。
熱源センサーが夜間にイノシシを検知した際は、即座にスマートフォンに通知を送信するシステムも普及しており、発見から数分以内に威嚇対応が可能です。
これにより、被害を「発生させない仕組み」が構築でき、電気柵やわなの効果も相乗的に高まります。

3. 労働負担・コストの大幅削減

従来の防除では「日中の見回り+夜間の警戒」で1人あたり月30時間以上を要するケースもありました。
ドローン導入後は、自動飛行ルートの設定により夜間監視を自動化できるため、見回り回数を週1〜2回に削減可能。
さらに、作業員の安全確保(熊・イノシシとの接触防止)にも大きく貢献します。
一部自治体では、年間100時間以上の作業時間削減が報告されており、省人化の観点でも極めて効果的です。


運用時に注意すべきリスクと課題

1. 鳥獣の“慣れ”による効果低下

ドローンの音や光に動物が慣れてしまうと、威嚇効果が徐々に低下するリスクがあります。
そのため、音源や光パターンを定期的に変更し、飛行ルートをランダム化する工夫が必要です。
また、単独運用ではなく、電気柵や見回りと併用する「複合対策型」運用が推奨されます。

2. 気象条件や地形による飛行制限

強風・降雨・濃霧などの気象条件下では飛行が制限されるほか、山間部では電波干渉やGPS誤差が生じる場合があります。
近年は耐風性能・防水性能に優れたモデル(例:DJI Matrice 4T、DJI Mavic 3Eなど)が登場していますが、それでも運用計画の柔軟性が求められます。

3. 操作技術と安全管理

飛行区域が住宅地や道路に近い場合、操縦ミスや機体トラブルによる落下リスクが課題になります。
特に自治体導入時は、**「安全運航マニュアル」や「操作講習」**を義務化し、第三者被害を防止する仕組みづくりが必要です。
一部では、地域の防除隊員に「国家資格・無人航空機操縦者技能証明(二等)」取得を推奨する動きも広がっています。

4. 初期コスト・維持費の負担

ドローン本体、赤外線カメラ、スピーカー、バッテリー、保険などを含めると、初期投資は50〜200万円程度になるケースもあります。
ただし、共同運用や補助金活用で実質負担を抑える方法もあり、後述する「費用と補助金制度の活用」で詳細を説明します。


効果を長期的に維持するためのポイント

ドローンによる鳥獣対策は、導入直後の効果が高い一方で、「運用の継続性」が鍵になります。
以下の3つのポイントを押さえることで、長期的な成果を維持できます。

  1. データ蓄積と定期分析
     飛行データ・出没記録を定期的に分析し、行動パターンや季節変動を可視化します。
     「いつ・どこに・どの種類の動物が出るのか」を数値化することで、次年度以降の対策精度が向上します。
  2. 多角的アプローチとの併用
     ドローンだけに頼らず、電気柵・見回り・追跡カメラ・地域住民の通報システムなどと組み合わせることが重要です。
     複数の対策を同時に行うことで、慣れや抜け漏れを防ぎ、持続的な忌避効果を得られます。
  3. 地域全体での共有体制構築
     自治体・農協・警備会社・ドローンスクールなど、地域ごとに「ドローン運用ネットワーク」を形成することで、運用技術やデータを共有。
     個別運用では難しい長期管理を、地域単位で効率的に実現できます。

野生動物保護法・地方自治体の条例との関係

鳥獣被害対策では、野生動物に直接危害を与えないことが大前提です。
そのため、ドローンの活用が「捕獲・追跡・威嚇・撮影」のどの段階に該当するかを明確に理解する必要があります。

1. 鳥獣保護管理法の基本原則

「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)」では、
野生動物の保護と適正管理を両立させることを目的としており、許可なく捕獲・威嚇行為を行うことは禁止されています。
ただし、自治体が認定する「有害鳥獣捕獲」事業や「農業被害防止活動」として実施する場合には、
都道府県知事または市町村長の許可のもとでドローンを運用できます。

2. ドローンによる威嚇行為の扱い

音声や光を用いた威嚇は、「動物に危害を加えない範囲」であれば合法です。
ただし、レーザー照射や接近追跡など、動物にストレスを与える可能性がある方法は慎重に扱う必要があります。
自治体によっては「夜間照明・音響機器使用に関する条例」があるため、環境保全課や農政課への事前相談が推奨されます。

3. 私有地・共有地での飛行に関する合意

鳥獣対策の現場では、複数の農地所有者の上空を飛行するケースが多く見られます。
私有地上空を飛行する場合は、土地所有者の承諾を得ることが基本です。
地域の集落単位で「ドローン飛行に関する合意書」や「運用ルール」を作成しておくとトラブル防止につながります。

導入までのステップと実践ガイド

ドローンを鳥獣対策に導入するには、「目的設定 → 機体選定 → 運用設計 → 教育体制 → 維持管理」の流れを明確にし、計画的に進めることが重要です。
単にドローンを購入して飛ばすだけでは十分な効果は得られず、運用設計とデータ管理を含めたトータルプランが求められます。
ここでは、現場で成果を上げている自治体や農家の取り組みを参考に、導入の実践ステップを解説します。


効果を高める運用設計(ルート・時間帯・頻度)

ドローンの効果を最大限に引き出すためには、「どこを」「いつ」「どのくらいの頻度で」飛ばすかという運用設計が鍵となります。

1. 飛行ルート設計

AIマッピングソフト(例:DJI Pilot 2)を使い、被害エリアの地図データを元に自動ルートを設定します。
過去の出没地点をヒートマップ化し、重点監視エリアを優先巡回するのが効果的です。
山間部では高度差を考慮した3Dルート設計を行うことで、木々や地形に影響されない安定飛行が実現します。

2. 飛行時間帯

多くの野生動物は薄暮(早朝・夕方)に活動が活発になるため、日の出前・日没後1時間の巡回が最も効果的です。
この時間帯は視界が悪いため、赤外線カメラやライト搭載機が有効です。
また、季節ごとの行動パターン(春=繁殖期、秋=食害期)に合わせたスケジュール設計も重要です。

3. 飛行頻度

初期は「週2〜3回の定期巡回+出没後の臨時飛行」を行い、被害が減少すれば週1回に調整。
AI解析によって出没予測が可能になれば、「自動発進による警戒飛行」へ移行できます。
この段階的運用により、費用対効果と省力化の両立が可能です。


安全運用のためのメンテナンスと教育体制

安全で安定した運用を続けるには、定期点検・操縦者教育・緊急時対応の体制構築が不可欠です。

1. 機体・バッテリーの定期点検

  • 飛行100回を目安にモーター・プロペラ・センサーを点検。
  • バッテリーは膨張・電圧異常を定期的に確認し、劣化が進んだものは早期交換。
  • 年1回のメーカー点検(有償)を受けると、事故防止・保険適用条件の維持に役立ちます。

2. 操縦者教育とライセンス管理

  • 夜間・目視外飛行が多いため、操縦者は**無人航空機操縦者技能証明(二等以上)**または同等の講習修了を推奨。
  • 年1回の「安全運用研修会」や「模擬飛行訓練」を実施し、トラブル対応力を高めます。
  • 自治体運用では「ドローン安全運航管理者」など役職を設け、責任体制を明確にする例も増えています。

3. 緊急時対応マニュアル

万一の墜落・通信断・火災発生に備え、対応手順を文書化しておくことが重要です。
警察・消防・自治体への報告フローを明示し、損害発生時には迅速に保険請求できるよう記録体制を整えます。
事故ゼロを継続できれば、行政からの信頼・補助金採択率の向上にもつながります。


AI・自律飛行・画像解析による進化

AI(人工知能)の発展により、ドローンは「監視+分析+判断」を自動で行う段階に到達しています。

1. AI画像認識による自動識別

ドローンのカメラ映像をAIがリアルタイムで解析し、鳥・獣・人・車などを自動分類。
これにより、「カラスのみ威嚇」「イノシシ出没時のみ通知」などの精密制御が可能になりました。
AIモデルはディープラーニングで継続学習するため、使用を重ねるごとに識別精度が向上します。
最新機種では、95%以上の識別精度を達成しているものもあります。

2. 自律飛行と自動ルート最適化

ドローンの自律飛行技術(Waypoint・RTK・LiDARマッピング)により、地形を自動認識しながら飛行ルートを最適化できます。
これにより、山間部や森林などGPSが不安定な環境でも、障害物を自動回避して安定飛行が可能。
夜間でもAIが安全なルートを判断し、ドローンが自律的に出発・帰還を行う仕組みが実用化されています。

3. クラウド連携とデータ可視化

撮影データや検知結果はクラウド上で自動保存・解析され、
自治体・研究機関・地域組織がオンラインで共有可能になりました。
これにより、地域全体の鳥獣分布や行動傾向を可視化し、**「広域データベースによるスマート鳥獣管理」**が進んでいます。
地図上に熱度マップを表示するシステム(例:Agri-Drone Cloud、NTTe-Drone Analyticsなど)も普及しつつあります。

導入を検討する前に確認したいポイント

ドローンを鳥獣対策に導入する際には、「目的」「環境」「運用体制」を明確にしておくことが成功の鍵です。
導入を急ぐあまり、目的や地域条件を十分に検討せずに購入してしまうと、効果が出ない・運用が続かないといった問題に直面します。
この章では、失敗を防ぎ、長期的に成果を上げるために導入前に確認しておくべき重要ポイントを解説します。


環境や地域条件に合わせた運用方法の見極め

鳥獣対策の効果は、環境条件によって大きく変わります。
地域の地形・植生・気象・動物の生息密度などを考慮し、適切な運用設計を行うことが重要です。

1. 地形・環境条件の確認

  • 平地農地:自動飛行ルート設定が容易。夜間の赤外線監視に最適。
  • 山間部・森林地帯:障害物回避センサーとRTK測位が必須。通信断に備えたフェイルセーフ機能が重要。
  • 水辺・河川周辺:防水・防塵仕様の機体を選定(IP54以上推奨)。

地形や風の影響を事前に調査し、テスト飛行を重ねて最適高度・速度を決定することが効果を大きく左右します。

2. 気象条件への対応

気温や風速が一定以上になると、バッテリー消耗や機体安定性に影響が出ます。
特に冬季の北海道や東北では、低温耐性モデル(Matriceシリーズなど)を選ぶことで安定稼働を確保できます。

3. 地域社会との連携

地域住民への理解と協力を得ることも欠かせません。
飛行ルートや時間帯を共有し、「騒音・プライバシー配慮・安全確保」の方針を説明しておくことで、運用トラブルを防止できます。
自治体主導で「ドローン運用ルール」や「同意書」を作成するケースも増えています。


よくある質問

ここでは、ドローンを鳥獣対策に導入する際によく寄せられる質問とその回答をまとめました。
実際に現場で導入を検討している農家・自治体・法人の方から多く挙がる疑問を中心に、専門的な視点で解説します。


ドローンで本当に鳥や獣を追い払うことはできますか?

はい、可能です。
ドローンの音・動き・光は動物に強い警戒心を与えるため、一定の忌避効果が認められています。
特に、カラス・ヒヨドリ・シカ・イノシシといった警戒心の高い動物には有効で、音響スピーカーやライトを併用することでさらに効果が高まります。

ただし、同じルート・音・時間帯で繰り返すと慣れてしまうため、運用設計が重要です。
AIドローンによるランダム飛行や音源の切り替えを行うことで、長期間にわたって高い効果を維持できます。


ドローンの音で鳥獣が慣れてしまうことはありますか?

あります。
ドローンの威嚇効果は高い一方で、同じ刺激を繰り返すと動物は学習して「危険ではない」と判断します。
この“慣れ”を防ぐためには、以下の工夫が有効です。

  • 飛行ルートや高度を定期的に変更する
  • 警戒音や光のパターンをランダムに設定する
  • 電気柵・見回りなど他の手段と併用する

また、AIドローンでは時間帯・動物種ごとに異なる威嚇方法を自動選択できるため、従来よりも長期的な忌避効果を維持できます。


補助金を利用して導入するにはどうすればいいですか?

国・自治体ともに、鳥獣被害対策やスマート農業推進を目的とした補助制度が整備されています。
代表的なものは「鳥獣被害防止総合対策交付金(農林水産省)」で、ドローン導入費の1/2〜2/3を補助する仕組みです。
自治体単位での導入や集落単位の共同運用を計画すると採択されやすくなります。

申請の流れは以下の通りです:

  1. 導入目的・エリア・期待効果をまとめた計画書を作成
  2. 自治体の農政課・環境課へ相談
  3. 見積書・事業計画書を添付して申請
  4. 採択後、購入・実績報告

また、「スマート農業技術導入支援事業」「地域鳥獣対策補助金」など、地域独自の制度もあります。
申請時期は年度ごとに異なるため、早期の情報収集がポイントです。


個人や小規模農家でも導入可能ですか?

はい、可能です。
最近では小型・低コストのドローン(例:DJI Mavic 3E/Mavic 3 Thermal)でも、
赤外線検知や自動飛行が行えるようになり、個人単位の導入事例も増えています。

また、地域単位での共同購入・レンタル・自治体貸出制度を利用することで、負担を抑えつつ効果的な運用が可能です。
ドローンスクールや販売店が運用サポートを行っている場合もあるため、購入前に相談すると安心です。


効果が出るまでの期間はどのくらいですか?

地域・動物の種類・飛行頻度によって異なりますが、一般的に導入から1〜3か月で効果が確認されるケースが多いです。
AI威嚇ドローンを用いた自治体実証では、導入初月で出没回数が半減した事例もあります。
ただし、継続的な運用・データ分析・対策見直しを行わないと、半年〜1年で効果が薄れることもあるため、
PDCAサイクルによる長期的な対策体制の構築が重要です。

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